「好きを仕事に」
というフレーズをよく聞くようになりましたね。
人生100年時代という言葉が定着し、転職・副業をする人の割合は徐々に増加。
現時点で、「会社の平均寿命よりも、人の働く年数の平均の方が長い」と言われており、同じ企業で同じ仕事だけをして、一生を終えることがどんどん難しくなってきています。
そんな中、「好きなことを仕事にすべき」「好きなことを仕事にしないと、大変なことになる」という言葉を聞いて、焦っている人も多いのではないでしょうか。
私は以前の仕事でキャリアカウンセラー兼事務の仕事をしており、縁あって今はライターとカメラマンの仕事をしている少し異色の経歴を持っています。
もともと「文章を書くこと」「写真を撮ること」が大好きで、今の状態はいわゆる「好きを仕事にしている」ということになります。
前職の経験もあって、学生から社会人の方まで、就職・転職の相談を受けることがよくあります。
その際に「好きを仕事にするために転職すべきかどうか」「好きを仕事にしたいけれど、何が好きかわからない」という相談をされる機会が、かなり増えてきました。
ただし、そのほとんどの人が「好きを仕事にする」を誤解しています。
「好きを仕事にする」は華々しく見えますが、この本当の意味を誤解したまま仕事にしてしまうと、不幸な結果を招いてしまうことが多いです。
今回は、
・「好きを仕事に」の本当の意味
・「好きを仕事に」を成功させるために実践すべきこと
についてまとめましたので、「好きを仕事にしたい」と考えている方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。
あなたが目指す仕事は、本当に好きなことですか?
「好きを仕事に」には、重要な言葉が1つ抜けています。
それは、「好きな”こと”を仕事に」です。
と思った方も要注意。
これを「好きな”もの”を仕事に」と勘違いしている人が多いんです。
「好きなもの」を仕事にすると、失敗しやすい
たとえば、車が大好きなAさんがディーラーの仕事を選ぶとします。(あくまでも例として挙げているだけなので、悪しからず。)
「大好きな車に関わる仕事だから、早く成長するために全力でがんばろう!」
と、最初は意気込んでいます。
しかし、結果的には売上が全然上がらず、2年で転職してしまうことになりました。
大好きな車に関わる仕事であり、「好きを仕事にした」と思い込んでいたAさん。
好きを仕事にしたはずなのに、なぜAさんはディーラーの仕事がうまくいかなかったのでしょうか。
答えは簡単で、Aさんは「売ることが苦手(嫌い)だった」からです。
Aさんは、車が大好きだったので、車の種類やそれぞれの特徴、運転しやすさなどはすべてインプットしていました。お客様に聞かれたことはすぐに答えることができます。
ただし、お客様に販売するために必須なコミュニケーション能力が低く、販売実績を上げることがなかなかできませんでした。
つまりAさんは、
・車を知ることが好き、車の運転をすることが好き
なのであって、
・車を売ることが好き
というわけではありませんでした。
車のことをいくら知っていても、ディーラーの仕事は「売ること」です。
「売ることが好き」でなければ、ディーラーの仕事は「好きな仕事」と言えるのでしょうか。
「好きを仕事に」するためには、「好きなもの」で選んではダメ
「好きを仕事にする」というのは、「好きなことを仕事にする」であって、「好きなものを仕事にする」ではありません。
私の周りにも
・パンが好きだから、パン屋さんで働きたい
・飛行機が好きだから、CAになりたい
という相談が来ますが、「好きなものの、何をすることが好きなのか」ということを必ず聞くようにしています。
そうすると、
「パンを食べることが好き」→パン屋さんのメインの仕事は食べることではない。作る・接客するなどが好きなのかどうかを考え直した方がいい。
「どの飛行機に乗るのか考えることが好き」→飛行機の提案の仕事が向いていると思うが、旅行会社もしくは空港カウンターの仕事。
という風に、向いている仕事がわかるようになります。
「好きを仕事に」はクリエイティブな仕事である必要はない
「好きを仕事に」と聞くと、ハンドメイドやデザインなど、クリエイティブな仕事を思い描く方が多いと思いますが、必ずしもそうではありません。
むしろ、そうではない仕事であることの方が圧倒的に多いと思います。
・皆が働きやすいように、書類をスムーズに処理すること【営業事務】
・お客様に1番合う商品を一生懸命探すこと【販売職】
こういった仕事も、「すること」が好きなのであれば、立派な「好きを仕事にする」です。
「好きを仕事にする」にとらわれている人は、一度「自分の好きなこと」をきちんと考え直してみてください。
「好き」を仕事にするメリット
先程は「好きを仕事に」について、よく陥りがちな誤解について解説しました。
それでも「好きを仕事にしたい」という方向けに、好きを仕事にすることのメリット・デメリットについてお話ししたいと思います。
ここからは、趣味に近いことを仕事にしている人を想定して書き進めたいと思います。
私自身も、「文章を書くことが好き」「写真を撮ることが好き」なことからライター・カメラマンの仕事をしているため、その経験からもお伝えします。
①毎日の充実感が違う
好きを仕事にして、最も感じるメリットがこちら。
毎日の仕事が「好き」に囲まれているので、「明日月曜日だ」といって落ち込むことは無くなりました。
いつも熱意を持って意欲的に仕事をすることができているので、毎日とても幸せです。
仕事をしている時ですら楽しいので、人生の充実度がかなり上がったと実感しています。
②スキルアップが楽しく、成長できる
今までは「仕事の時間以外に仕事のことを考えるなんて、できない」というタイプだったのですが、24時間仕事のことを考える人間になりました。
常に仕事のことを考えている人と、仕事以外の時間は別のことを考えている人なら、圧倒的に常に考えている人の方が仕事のスキルが上がります。
全力で仕事について学んでいるので、スキルアップのスピードがびっくりするほどに上がりました。
③後悔しない・卑屈にならない
前職を辞める前、私はとても悶々としている日々を過ごしていました。
同じようにライティングや写真撮影を頑張って、仕事にしている人を見ていると、
・私もあんな風に活躍したい
・あの人より私の方ができるはずなのに、私は今の仕事があるから頑張れない
なんて、醜い嫉妬をしてしまっていました。
やってもいないのに、やっている人を見下すなんて、バカバカしいですよね。
私はそんな自分が嫌になって、全力で今の仕事をするために、前職を辞めました。
その結果、人のことを羨んだり妬んだりする時間はなくなり、自分のことだけに集中することができるように。
他の人に対して卑屈になったり、人生に後悔したりしないことで、少し自分を好きになれた点は、自分でも思わぬメリットでした。
「好き」を仕事にするデメリット
①休みはある意味ゼロになる
・好きだからこそ、夢中になって仕事をやってしまう
・どんどんやりたいことが出てくる
・もっと勉強したいことが増える
ということは、頭の中が常に仕事でいっぱいという状態です。
会社員であればここまでにはならないと思いますが、フリーランスや起業となると、頭が休まる日は本当にありません。
私はそれでも幸せ指数が高い方がありがたいので合っていますが、「仕事とプライベートはきっちり分けたい」と考えるタイプの方は、向いていない可能性があります。
②「趣味として楽しい」だけでは終われない
今まで「趣味」としていたものを「仕事」にする場合の話です。
今までは下記のような言い訳が通用していましたが、仕事にした途端にこのような言い訳が通用しなくなります。
「趣味だから、このぐらいでいいか」
「仕事じゃないし、ここまで知っておかなくても大丈夫だよね」
今までは「楽しい」だけでよかった趣味が、急に「責任」を持ち出してしまうと、純粋に楽しめなくなることも少なくないです。
勉強も今まで以上にして、アウトプットもして、時に好きではないこともしなくてはならない。
それが仕事です。
「趣味はゆったりと楽しむためのもの」と考える方は、趣味の延長を仕事とすることは、あまりおすすめできません。
③仕事に時間がかかる
①で話した内容に似ている部分もありますが、「好きだからこそこだわってしまい、仕事に時間がかかる」ということが往々としてあります。
私もまさに今経験しています。
好きなことを仕事にするからには、できるだけこだわりたいですよね。
「好きだからこそ、良いものをアウトプットしたい!」
そんな思いから、1つの仕事にかなり時間をかけてしまい、業務時間外や休日にまで仕事を続けているということがザラにあります。
「好きを仕事に」を成功させるために実践したいこと
好きを仕事にするためのメリット・デメリットについて、先ほどお話ししました。
ここからは、実際に「好きを仕事にするために、どんなことを実践すべきか」について、書きたいと思います。
私自身も、前職で働いている時から準備をしていたおかげで、今「好きを仕事に」することができています。
小さなことでもいいので、今からできることを少しずつ準備するようにしてみましょう。
①情報発信をする
何を仕事にしたいかにもよりますが、積極的に情報発信をすることは大きな一歩です。
たとえば私の場合、発信することで、実際に仕事を受注することができました。
カメラの使い方についてブログで発信→ライターの仕事が来た
写真をSNSにアップ→フォロワーが増えて、撮影依頼の仕事が来た
どんな仕事でも、あなたが何をする人なのかが全くわからないと、絶対にあなたに仕事が来ることはありません。
まずは「私こんなことできますよ」ということをアピールするために、ブログでもSNSでもいいので、発信する癖をつけてみてください。
重要なのは「反響がなくても続ける」こと。
それでも続けることで、徐々に見てくれる人は増えるので、地道に頑張ることをおすすめします。
②目標となる人を見つける
「ロールモデル」と呼ばれるものに似ていますが、もし自分のやってみたい仕事を実際にしている「憧れの人」がいるならば、その人を徹底的に研究することをおすすめします。
その人が過去にどんなことをやっていて、どんな実績があって、何がきっかけでここまで登りつめているのか。
どんな発信方法を使って、どんな内容のことを発信しているのかを調べることで、何かヒントを得られる可能性があります。
その中で「真似したい」と思う箇所を取り入れて、日々を送ることからスタートしてみると、意識が変わります。
③副業を始めてみる
好きを仕事にしたいけれど、収入面で心配…という方は多いと思います。
私も長い間、収入面で悩んでいました。
それならば、少しでもいいので、副業としてチャレンジしてみることをおすすめします。
会社員として勤めながら別の仕事をすることは本当に大変ですが、実際に稼ぐという経験は、大きな自信に繋がります。
また、ある程度の仕事の流れや仕事の受け方がわかっていると、実際に専業にした時のスタートダッシュが大きく変わります。
もちろん、「副業をしてみて、やっぱり向いていないと気付いた」ということも、立派な成長です。
今はココナラなどスキルのシェアサービスやBASEなどショップ運営サービスで気軽に副業を始めることができるので、まずは登録してみることをおすすめします。
④転職サイトを見る・エージェントに相談する
「好きを仕事にしたいけれど、フリーランスは安定していないから嫌だな」という方は、転職がおすすめ。
昨今の時代の流れから、転職市場はかなり活発化しており、未経験でも新しい職種にチャレンジしている人はたくさんいます。
転職の第1歩としておすすめなのは、転職サイトで求人を見ること。
転職サイトで自分の求める仕事を見つけたら、やる気がみなぎります!
モチベーションにもなるので、すぐに転職するわけではなくても、転職サイトは登録してみておくことをおすすめします。
「好きを仕事にしたいけど、どんな仕事が合うのか、まだよくわからない」
という方は、エージェントへの相談がおすすめ。
転職エージェントとは、無料で転職相談を受けられるサービス。担当となるエージェントさんに希望を伝えると、自分に合った求人をたくさん紹介してくれます。
自分の希望は意外と自分ではわからないので、ぜひ相談してみることをおすすめします。
⑤本を読む
「いつかは好きを仕事にしたい。でも今は何もできない。」と悩む方も多いと思います。
そんな方は、とにかく本を読んで知見を蓄えましょう。
・自分の適職がわからない
・どのように動けばいいのかわからない
・モチベーションがうまく保てない
など、悩んで先に進めない場合は、本を読むと解決できることが多いです。
「好きなことを仕事に」することで、充実した毎日に
「好きを仕事に」の意味を間違えてしまうと、「好きを選んだはずなのに楽しくないし、成果も上がらない」という悪夢の状態に陥ります。
「好きなもの」ではなく「好きなこと」を仕事にすることで、仕事に夢中になれる充実した毎日を送れるように、この記事が少しでもためになれたら、うれしいです。